革新的深海資源調査技術

プログラムディレクター

石井 正一

石油資源開発株式会社 顧問

1973年新潟大学人文学部経済学科卒業。同年石油資源開発(株)入社。同社取締役企画室長、常務執行役員長長岡鉱業所長、常務取締役、専務取締役、代表取締役副社長を経て現在顧問。
2008年日本CCS調査(株)設立と同時に代表取締役社長就任。
2009年より2018年まで経団連海洋開発推進委員会総合部会委員。
2014年日本メタンハイドレード調査(株)設立と同時に代表取締役社長就任。2016年内閣府SIP「次世代海洋資源調査技術」PD代行など多数の要職を歴任。

将来の産業化に向けた
深海資源の調査・生産への挑戦

日本を取り囲む海洋の深海底には豊かな鉱物資源が存在していることが知られており、排他的経済水域(EEZ)の2/3を占める水深2,000mから6,000mの海底には、最近の調査・研究により経済社会の発展に不可欠なレアアース泥を含む海洋鉱物資源の存在が確認されている。9府省連携により進められる本課題では、世界に先駆けて深海底に賦存するレアアース泥等の鉱物資源に関する革新的深海資源調査技術を段階的に確立・実証し、民間企業に対する技術移転を始めとする社会実装を進め、将来を見据えた産業化モデル構築に道筋をつけることを目指す。

SIPを加速させる、12人の第一人者たちPD Interview

深海をリードできるのは
日本しかない。

ただ今、レアアースの調査・
生産技術の開発を推進中。

日本の排他的経済水域(EEZ)には、豊かな鉱物資源の存在が確認されています。本プログラムでは、水深6,000メートルの海底に堆積する「レアアース泥」などの調査、生産技術の開発を推進中です。石井正一PDに、この困難かつ壮大なチャレンジについて語っていただきました。

Q

このプログラムへの意気込みをお聞かせください。

PD

日本の排他的経済水域の面積は世界第6位。深さを考えた体積では世界第4位になり、海洋国家日本としては、しっかりとした深海底の形状を把握し、資源量、海洋環境の把握に努めていくことが必要だと思っています。

「水深6,000メートルは
困難さを抱えた世界です」

Q

水深6,000メートルの深海は、どんな世界でしょうか?

PD

6,000メートルですと、大体600気圧の圧力。つまり1平方センチメートルあたり600キロの圧力がかかります。温度はほぼ0℃近くになります。真っ暗闇です。
地上で使われている電波信号が使えないので、コミュニケーションは音響による通信しか方法がありません。レーザー光も届かない困難さを抱えている世界ですね。

Q

「江戸っ子1号」(フリーフォール型深海探査機)によって、魚の存在が確認されていますね。

PD

6,000メートル海域にはソコダラとか、甲殻類とか、微生物など、いろんな種類の生きものが棲んでおり、環境との両立も課題のひとつです。

「レアアースは、EVの高機能化に欠かせない」

Q

レアアース(希土類元素)、レアメタル(希少金属)は何に役立つのか教えていただけますか。

PD

2020年代、EV自動車のモーターに用いられる高性能磁石には、ネオジムやジスプロシウムなどの元素が必要となってきますし、それから、排気ガス関係のところにも、セリウムが必要です。また、LEDライトにもイットリウムやガリウムが使われています。
もちろん、レアアース、レアメタルは自動車だけではなく、テレビ、デジタルカメラ、スマートフォンとか、多種多様なところに使われ、機械の高機能化に欠かせないものになっています。
今、世界のシェアの8割は中国。埋蔵量も中国は世界の4割強を占めています。そういう中で日本のEEZの中に、どれだけの鉱物資源が賦存しているのか把握することが重要です。
本プログラムではレアアースが高濃度に存在する海域といわれる「南鳥島エリア」を中心に調査をしています。

「深海AUVの導入や
深海底ターミナルの実現へ」

Q

調査のために、深海AUV(自律型無人探査機)や深海底ターミナルが導入されると聞きました。

PD

今、深さ6,000メートルの海面にいる船上から音波による音響探査をすることによって、データを取得中です。
これに加えて来年(2020年)の2月から、海中ロボットともいわれる、深海AUVが隊列を組んで潜水し、海底面の近いところで解像度の高い音響探査を行います。音響画像解析によって賦存量やエリアを特定し、「レアアース泥の解泥、採泥、揚泥」のステージにつなげていきたいと思っています。
また、深海底ターミナルは、海中充電し、5日間くらいにわたって調査を継続させるシステムを開発中です。さらに揚泥に必要な6,000メートルのパイプも開発中です。

「レアアース泥の解泥、採泥、揚泥」の技術に関しては、既に「パワーグラブ」で3立方メートルの高濃度レアアースを含む泥を、調査海域から採取済みです。これだけの量の採泥は世界初なんですね。今までの「ピストンコアラー」(海底面下最大20メートルまでの柱状採泥を行うことができるサンプリング機器)で採っていた量とは桁違いです。これによって、粘性や、密度とか、堆積物の性状を詳しく分析することができています。

「関係府省庁と研究機関の
緊密な結びつきが特色」

Q

SIPの大きな特徴として、産学官連携。「官」の中でも、府省庁の連携が重要視されていますが。

PD

はい。この(2019年)7月から外務省にも入っていただきまして、9府省の連携のもと、多くの研究機関が参加し、推進委員会が構成されています。そこにはJAMSTEC(海洋研究開発機構)、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)、産業技術総合研究所、そして、うみそら研(海上・港湾・航空技術研究所)も入っています。これは他のプログラムにはない、極めて広範囲にわたる連携プレーが行われている証拠ではないかと思っています。
第2期は、既に1年以上経過していますが、こうした府省庁連携、そしてまた研究機関同士の結びつきが、極めて緊密に、そして迅速におこなわれているということは特色ですね。これをやりますと、今のスピード感で、5年という第2期のスピード感が相当、内容の濃いものになってくるというように思いますね。

「このプログラムの成果が
多面的に開花していく」

Q

最後に、PDご自身がお考えになる、海洋国家日本の未来についてお聞かせください。

PD

第2期はレアアース、レアメタル、コバルト、マンガン等を含めた鉱物資源に注力しています。これが、本当に経済性のあるものになると、日本の産業界にとっては非常に心強いものになるのではないかと思います。
例えば、石油の場合、ホルムズ海峡問題があります。これと同じようなことがレアアース・レアメタルにあった場合も、安定して国内で供給できれば、安全保障の面でも安心感が生まれると思います。
また、このプログラムを契機に、海洋環境の実態解明、海底広域マッピングシステムの構築、そしてまた、海底下の有効利用のような方向に進んでいきますと、成果が多面的に開花していくと思います。

資料01:マンガンノジュール。調査海域ではレアアース泥とともに確認される

資料02:レアアース泥。レアアース元素を高濃度で含む

資料03:各テーマ概要