IoE社会のエネルギーシステム

プログラムディレクター

柏木 孝夫

東京工業大学 特命教授・名誉教授
先進エネルギー国際研究センター長

2007年東京工業大学大学院教授、09年同大先進エネルギー国際研究センター長、10年一般社団法人低炭素投資促進機構理事長、11年一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター理事長、12年同大特命教授・名誉教授。

IoE社会実現のための
“System of Systems”を着実に

Society 5.0におけるエネルギーと情報が融合する社会(IoE(Internet of Energy)社会)実現のため、再生可能エネルギーが主力電源となる社会のエネルギーシステムの設計について検討し、エネルギー利用最適化に資するエネルギーシステムの構築と、その要素技術であるエネルギー変換・伝送システムのイノベーションの達成に向けた研究開発を実施し、社会実装を図る。

SIPを加速させる、12人の第一人者たちPD Interview

エネルギーの利用を
最適化する、
画期的な革新を。

再生可能エネルギーを制御して
無駄なく使える
強靭な都市の実現を目指します。

最新のIoTやAIを活用し、デマンド(需要)側をきめ細かくコントロールすれば、再生可能エネルギーを多く取り込む、脱炭素型のスマートシティやスマートコミュニティが構築できる。そんなエネルギーシステムのグランドデザインについて、柏木 孝夫PDにお話を伺いました。

「電力化、脱炭素化、
デジタル化するエネルギー」

Q

それでは、最初に、「IoE社会のエネルギーシステム」という課題の概要と狙いをお聞かせください。

PD

現在のエネルギー世界を俯瞰的に見ると電力化の方向に進んでいる。そして、脱炭素化の方向に向かっている。もうひとつ、インフラが変革期を迎えていて、アナログからデジタル化に向かっている。
これらを考え合わせると、やはりこれからの電力システムに貢献できる内容に絞り込んだほうが一体感が出てくるということで、IoEすなわちインターネット・オブ・エナジーという言葉を使ってみました。
普通、IoEというとインターネット・オブ・エブリシング、すべてのものをインターネットにぶら下げるということになりますが、エネルギーのインターネット化という「IoE社会のエネルギーシステム」というタイトルにさせていただきました。

Q

地球規模で見ると、省エネはなかなか進んでいないということですね。

PD

気候変動問題の基準の年にしようとする動きがあったのが1990年です。あの時の世界全体の電力消費量が10兆キロワットアワー。昨年度が22兆キロワットアワー、世界全体で2.2倍に伸びたわけです。省エネを推進しようと言っているにも関わらず、2.2倍に伸びてしまっている。
その中で、特にアジアの伸びっていうのが大きい。これが4倍。それらを考え合わせると、やはり合理的に電力量を制御ができるようにしていくことが非常に重要になってくると思います。
もう1つ重要なことは、脱炭素化。世界中で、石炭による火力発電の割合は30パーセント。そう考えると、石炭を抜きにはできない。中国では70パーセント位が石炭火力ですから。
脱炭素化と電力化の社会の中にあって重要となる再生可能エネルギーを取り込んでいくためには、共通基盤の新しいパワーエレクトロニクスの技術が必要と言えます。
例えば、太陽光はさんさんと輝いて、電気が余っていても、買い手がいない。その時に共通基盤があれば、デマンド(需要)のほうに、「今、乾燥機を稼働させよう」、「今、食器洗い機を使おう」という指令を出せるわけです。余剰になったり、不足したりする自然エネルギーが無駄なく使えるようになるわけです。これは、今までと全く違った社会を築くということになります。

「青色発光ダイオードの技術が
ワイヤレス給電の基盤技術に」

Q

なるほど。それはエネルギー消費を合理化するということですね。

PD

今回、共通基盤で2つの課題を設けました。1つがこのような再生可能エネルギーの、不規則な変動電源にも常に高効率の対応が可能な、現在の電力変換器に替わる「USPM」(ユニバーサル・スマート・パワー・モジュール)の開発です。すなわち、スマートで低コストかつ高速デジタル制御が可能となるWBG系MOSET(電界効果トランジスタの一種)の開発です。これには、新しい材料である酸化ガリウムを用います。
もう1つが、ワイヤレス給電など、給電の多様性のための基盤技術ということで、青色発光ダイオードの技術を応用したMHz帯からマイクロ波帯の電力伝送システムの開発です。
これもガリウム系で、ガリウムナイトライドを用いて磁気共鳴させることにより、磁気で電気をやりとりができ、すごく長距離の、ギガヘルツ級の、マイクロウエーブまで出せるものです。ノーベル賞の青色発光ダイオードの技術がワイヤレス給電の基盤技術に使われるという、大変なアプリケーションだと思います。これが応用できれば、工場内だけではなく家庭での機器も変わります。テレビがどこでも見られる。ドライヤーも好きなところでかけられる。ライフスタイルも変わってくると思います。

「ワイヤレス給電は
自動運転にもつながっていく」

PD

もう1つ大事なのは車の給電。今は大きなバッテリーの固まりですがバッテリーをかなり小さくできる。

Q

電気自動車が軽くなれば、それだけ燃費性能もよくなるわけですね。

PD

いろんな調査がありますが、車が走っている時の、概ね4分の1ぐらいが交差点付近を通過している、あるいは止まっている場合が多いといったデータもあります。大きな交差点のところがワイヤレス給電地域になれば、ここを通るときには充電され、自動課金される。課金オフにしておけば充電しないシステムにすることも可能になります。

Q

次のワイヤレス給電地域までもてばいいわけですね。

PD

バッテリーを小さくできるということで、自動運転との兼ね合いも非常にいいと言われています。こういう実証を、社会実装まで含めてやっていきたいと考えています。
もう1つがドローンです。ドローンは今、電力会社が中心となって研究していますが、電線をチェックするのに、バッテリーがなくなってしまうと、墜落する危険がある、鉄塔に設置した給電スポットから電波を出して給電をすることなどによってワイヤレス給電がうまくいけば、ドローンが高所を全部チェックできるようになります。ドローンによるスマート物流、見守り・駆けつけ、ケータリングサービスも出てくるかもしれません。
いろんな意味で、長寿高齢化社会にいて豊かさが味わえる、こういう社会を、目的にしていると言っていいと思います。

Q

先生が描く、近未来の都市のスマート化は?

PD

やはり都市は、自分のゆとりと豊かさが味わえる空間でなければいけないわけですよね。そういう意味で何があっても安心して暮らせる場所であるという意味で強じん化が必要だと私は思います。
そのための3つのキーワードがあります。
デマンドサイドの「スマート化」を図ること。そのスマート化を図るための「デジタル化」。そして「強じん化」です。強じん化、すなわちオフグリッド化するということです。停電などになっても大丈夫な都市をこれからは目指さないといけません。

「オフグリッドしても
生活できる強じんな都市を」

PD

最近、気候も随分亜熱帯的になってきている。台風の強さも変わっている。そうすると、やはり、オフグリッドしてもそこの中でどうにか生活できるデマンドサイドの強じん化がすごく重要になっていると言えます。
もちろん、IoEの中には自然エネルギー系もたくさん入れるということになりますから、IoE社会のエネルギーシステムを目指す以上に、もっと広がりをもった日本の国土全体の充実が図れる、スマートコミュニティ、あるいはスマートシティが創出できればいいと考えます。最終的な目標は、何があっても大丈夫な国土を造っていくということだと思います。